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Kia「PV5」登場で【EVキャンピングカー】が実現!?2026年春に日本導入!

伴 隆之
伴 隆之

EVシフトが進むなか、キャンピングカーも!

今の時代、「EVのキャンピングカー」を考えたことがあるひとも多いはず。すでに車中泊やキャンピングカーでの旅を楽しんでいるひとなら、静かなエリアでのエンジン音や化石燃料を多めに使っての走行など、気になることもあるだろう。
でも基本的にベース車両がトラックやワンボックス・バンではいたしかたない……? 

そこに登場したのが、韓国の自動車メーカー「Kia」が発売した「PV5」だ。特定のビジネスやライフスタイルに最適化された用途特化型のEV車両として開発された。
専用プラットフォームを基盤とした車両の基本部分はKiaが製造し、主要コンバージョン企業がユーザーの目的に合わせ福祉車両やキャンピングカー、タクシー、冷蔵車といった特装車、トラックなどにコンバージョンしていくということだ。
「PV5」は2026年春ごろに日本への導入が決まっているが、より大きいボディサイズの「PV7」も2027年に国内販売が決定。さらに「PV9」が2029年にデビューする予定。
では、「PV5」を紹介をしつつ、EVキャンピングカーへの可能性を探ってみよう。

手前がパッセンジャー(赤)、奥2台がカーゴ
フロント中央から充電
車中泊仕様

「PV5」には「乗用」と「貨物用」、2つのタイプがある

PV5は乗用タイプの「パッセンジャー」と貨物用「カーゴ」の2モデルをラインナップしているのが大きな特徴。企業・個人ユーザー両方にターゲットが向けられており、日本でのEVバン市場で新風を巻き起こすか注目が集まるところだろう。
パッセンジャー、カーゴともプラットフォームや足まわりといった基本構造は同じで、違いはシートやトリムといった装備面。さらにパッセンジャーのバックドアが電動上開き式なのに対し、カーゴでは手動観音式になっているのが大きな違いだ。
また、バッテリーについてもパッセンジャーが51.5kWh/71.2kWhという2タイプのニッケル・コバルト・マンガン電池を用意。カーゴはそれらに加えて43.3kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池もラインアップしている。
リン酸鉄はサイクル寿命の面でも充放電や放電サイクルに優れ、こまめに充電できる近距離での輸送業などに適した仕様だと思われる。

パッセンジャー
カーゴ

ボディパーツの組み合わせで最大16種類の派生モデルが開発できる!

いざ実車と対面すると、Kiaの新デザイン哲学「OPPOSITES UNITED(相反するものの融合)」が取り入れられたエクステリアは、全体的にはシンプルにまとめられつつも、どのクルマとも似ていない独自の表情が斬新。未来的でありながらどことなく愛嬌のあるフロントフェイスは、日本の景色にも馴染むような感じさえする。
そんなエクステリアはエアロダイナミクスを徹底的に追求し、商用車としては優秀なCd値0.28を達成している。
またPV5の注目点は「フレキシブルボディシステム」を採用していること。これは、フロントのキャブ部分を軸にリヤセクションであるルーフやリヤ&サイドウインドウ、スライドドアなど、さまざまなボディパーツを玩具であるLEGOのように組み合わせることで最大16種類の派生モデルが開発できるよう設計されている。
現在はノーマルルーフのみだが、ハイルーフモデルもすでに開発中で、2027年には日本に導入される予定だ。
このフレキシブルボディシステムにより、ミニバンタイプのパッセンジャーは乗車人数1列目-2列目-3列目が2-3-0の5人乗りを皮切りに、ゆくゆくは2-2-2の6人乗りや2-0-3の5人乗りも開発中で、ニーズに合わせて選択できるようになっていく。
カーゴの方も2-2のクルーキャブに加え、スライドドアの両開きや片開き、リヤやサイドウインドウの有無などの選択ができ、ビジネスなどの用途に応じて注文できるようになる。
また、スライドドア側から車椅子でアクセスできる「WAV(Wheelchair Accessible Vehicle)」も用意。床面積の広い低床フロアへ緩やかな傾斜のサイドスロープで楽に出入りができ、安全固定システムを搭載するなど、高齢化が進む日本において介護車としてのニーズにも応える。

左から、カーゴ、カーゴ、パッセンジャー

ハイエースとは、どう違う? 寸法比較!

PV5の3サイズはカーゴで全長4695×全幅1895×全高1930(パッセンジャーは1899)mm。サイズ的に近いミニバンだとトヨタ ヴォクシー(FF:全長4695×全幅1730×全高1895mm)だが、PV5のほうが全幅および全高の数値は大きい。またカーゴでのライバル車となりうるトヨタの200系ハイエースのバン(2WD・ロング・標準ボディ幅・標準ルーフ・スーパーGL=いちばん小さいタイプのハイエース)は全長4695×全幅1695×全高1980mm。PV5のほうがやはり幅広で、どっしりとした印象に見える。
ただし、PV5の直接のライバルとは言い難いが、ハイエースの2WD・スーパーロング・ワイドボディ・ハイルーフ(=いちばん大きいタイプのハイエース)は全長5380×全幅1880×全高2285mmなので、大きめのキャンピングカー制作のベースとするなら、PV5もハイルーフモデル、あるいはPV7が待たれるところ。
フロア形状に目を向ければ、ホイールベースはPV5が2995mm、ハイエースはロング(標準ボディ長)では2570mm(スーパーロングは3110mm)なので、PV5では車両のより離れた四隅にホイールハウスがあることになる。そして前述のように全幅はPV5が1895mmでハイエース標準ボディ幅が1695mm。またPV5はFFのEVということで、ハイエースでは邪魔だった縦置きトランスミッションのフロアへの張り出しがないこともあり、これでより広く、四角く、平らなフロアを得られていることになる。
実際にPV5の荷室を確認すると、パッセンジャーで荷室長1311mm×荷室幅1524mm×荷室高(セカンドシートまでの高さ)767mm。荷室床面地上高は633mmだ。これがカーゴだと同2255mm×1565mm×1520mmで、荷室床面地上高419mm。ハイエースバン・2WD・標準ボディは同3000mm(最長)×1520mm×1320mmで荷室床面地上高620mmだから、PV5カーゴのほうが荷室長で745mm短く、荷室幅が45mm広く、荷室高が200mm高いということになる。また、荷室床面地上高も201mm低いため、スペック的には荷物の積み降ろしもしやすいのだろう。
筆者は体験できなかったが、先日韓国で行われた試乗会に参加したカナダのジャーナリストは低床かつ高さのある荷室高により、実際に用意された段ボールでの荷卸しがとてもスムーズかつ、広さもいいと語っていた。
ただし、最小回転半径はPV5の5.5mに対してハイエースバン・2WD・標準ボディは5.0m。もちろんキャブオーバー車と比べるのは違う気もするが、ハイエースの小回り性能はさすがで、スーパーロングでも5.2m。ちなみにEVミニバンであるID:Buzz(プロ)は5.9mだ。

パッセンジャー リヤ 上部開き
カーゴ リヤ 左右開き
パッセンジャーリヤ開口
カーゴリヤ開口

乗用車的な加速、旋回、制動で、扱いやすい

今回、韓国の華城(ファソン)市にあるKia R&Dセンター内のテストコースにて、PV5をほんの少しだけ運転する機会を得た。コース内の直線路をパッセンジャー、カーゴ共に1往復ずつで130km/h以下での走行だった。
見た目は愛らしいが、アクセルを床までグンと踏むと、250Nmの最大トルクにより加速の立ち上がりは予想以上に素早い。レーン内で左右に繰り返してステアリングを切った際も1ボックスやミニバンで多く感じるリヤタイヤの追従の遅れやボディが左右に振られる感じがまったくない。リヤサスペンションはトーションビームで、ピタッとハンドル操作に車両が付いてくる感覚にはかなりびっくりした。
速度110km/hを超えたあたりから風切り音がやや耳に入るようになるが、そこまでの静粛性も抜群。ステアリングシフトによる回生ブレーキのフィーリングも自然で、ブレーキをかけた際のペダルタッチにも気になるところはなかった。
ほかにもレーンキープアシストの利きもよく、スマートクルーズコントロールをはじめとした先進運転支援システムもしっかり搭載。日常や旅で使う際に「使える道具」というキャラクターが強く感じられた。
また、運転時はフロントとサイドウインドウのガラスエリアが大きく見晴らしがいいのが好印象。垂直・水平基調のインパネデザインはシンプルかつモダンな感じで、必要な情報がサッと読めて操作がしやすい。また、パッセンジャーの後席に乗る際、ステップ高が399mmと低く乗降性にも優れている。
そんなファーストインプレッションはたった5分くらいだったので、細かい部分は日本に上陸してから改めて確認したい。

試乗
インパネ
前席
後席

純正のキャンピングカー仕様キットも!

PV5で忘れてはならないのがその汎用性の高さだ。今回、試作ではあるがパッセンジャーをベースにした車中泊モデルやキャンピングカーを見ることができた。
まずは車中泊モデルから。こちらは荷室にメーカー純正オプションで発売予定のベッドフレームをセットし、前倒ししたセカンドシートと高さをそろえ、その上に純正オプションのエアベッドをセットできるというもの。
荷室の壁面パネルを交換すればドリンクホルダーや照明など、好みのアイテムが取り付けられるようになっており、就寝時も使いやすい仕様。こうした後付けの純正パーツを豊富に取りそろえているところも見どころのひとつといえる。
キャンピングカーのほうは現在開発中の参考出品だが、Kiaやヒョンデのパートナー企業が製造する純正キットを装着している。荷室にフロアとベンチ兼キャビネットを設置するだけでキャンピングカーとして利用が可能。
右キャビネットには引き出し式収納を設け、IHクッカーほか調理道具などが収納できるなど、車外調理用のテーブルとしても使える設計だ。左キャビネットは引き出し式テーブル兼チェアを装備。
これらキャビネットやフロアはそれぞれのパーツごとで脱着できるので取り外しも簡単。休日にサクッと荷室にセットしてキャンピングカーとして使うことが想定されたこれらのキットは、日本でも需要が期待できる。
そもそもPV5には、220Vで最大36kWの電力を車内外へ給電できる「Vehicle-to-Load(V2L)」機能が搭載されており、キャンピングカーはもとより移動オフィスといった電力が必要な場面でも電気自動車ならではの威力を発揮できそう。もちろん防災といった面でも活躍できる。

車中泊仕様
純正オプションマット
キャンピングカー仕様キット
脱着可能キャンピングカーキットを左右に設定
フロア下収納

販売は新会社「Kia PBVジャパン」にて


日本国内での販売は来春を予定。販売は双日株式会社が100%出資する新会社Kia PBVジャパン株式会社が担う。Kia PBVジャパンは2026年の販売開始までに全国8カ所の正規ディーラー開設を目指す。サービス体制についてもパートナー企業との提携により、サービス拠点約100カ所を予定している。これらにより、販売はもちろんのこと、車検やメンテナンスといったアフターサービス、車両の架装といったさまざまなニーズに対して即座に応えられるようにしていくとのこと。
そんなPV5は、2025年10月30日から11月9日まで東京ビッグサイトにて開催されるジャパンモビリティショーに出展が決まっている。パッセンジャー・カーゴのほか、キャンピング仕様車も展示される予定。気になる人はぜひ会場に足を運んで実車をチェックしてほしい。

Kiaのエンブレム

「Kia PV5パッセンジャー」主要諸元

※[  ]内はカーゴ2人乗り
●寸法・重量
全長×全幅×全高:4695×1895×1899mm
ホイールベース:2995mm
ドレッド前/後:1617/1625mm
最低地上高:143mm
車両重量:2115kg[ 1833kg]
●モーター・性能
最高出力:120kW
最大トルク:250Nm
●駆動用バッテリー
[ 43.3kWh リン酸鉄リチウム(LFP)バッテリー:PV5カーゴ専用]
51.5kWh ニッケル・コバルト・マンガン(NCM)バッテリー
71.2kWh ニッケル・コバルト・マンガン(NCM)バッテリー
●性能
WLTCモード:一充電走行距離 基本形377km/ ℓ、航続型521km /ℓ
[経済型TBD、基本形379km/ℓ、航続型528km/ℓ]
最小回転半径:5.5m
乗車定員:5人[ 2人]
●諸装置
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン/後トーションビーム
ブレーキ:前後ディスク
タイヤサイズ:前後215/65R16

問い合わせ

Kia PBVジャパン株式会社
https://www.kia.com/jp/pbv

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