今日のクルマには、当たり前に備わっている集中ドアロック&キーレスエントリー。いちいち鍵穴にキーを突っ込んで施錠解錠なんて、もう誰もしてないのだ。

そんな現代において、私のキャラバンはどうだ。昭和48年型の営業車にそんなものが標準装備されているわけもなく、各ドアに大型のアクチュエーターを装着する「メーカーオプションの集中ドアロック」がデッドストックで残っている可能性は限りなく低い。

雨の日も風の日も、両手に荷物を抱えたまま(抱えていなくても)運転席、助手席、スライドドア左の各鍵穴へキーを入れて解錠施錠するのは、もはや旧車乗りにのみ許された「儀式」……いや、意地を張るのはやめよう。正直に言って、めちゃくちゃ面倒くさいのだ。
「旧車だから不便を楽しむもの」という呪縛から解き放たれるため、今回ついに重い腰を上げた。目指すのはただのキーレス化ではない。リモコンを持ったまま近づくだけで解錠し、離れると施錠されるアイテム、TO FIT(ツーフィット)製「キーレスエントリー&キーフリーシステム」の導入である。

アクチュエーターの設置は簡単。問題はワイヤハーネスをどう目立たなく取り回すかだ

初代キャラバン(E20型)のドア内張りを剥がすと、そこには、手動のロック機構とウインドウレギュレターだけしかない。まずはここに、TO FITのリモコンドアロックオプション「集中ドアロックセット」3ドア用価格1万6225円を装着する。キャラバンのプルプッシュ式のドアロックノブを電気式のアクチュエーターで上下できるようにして、キーフリーシステムなり、リモコンキーシステムを装着するためだ。付属する後付けアクチュエーター(モーター)をドアロックノブのシャフトに固定していく。詳細な説明書が付属するので、取り付けも安心だ!

付属する手動ロックのロッド(金属の棒)と、アクチュエーターの動きをいかに平行かつスムーズに連動させるかがキモだ。窓ガラスの昇降レールとの干渉を避けなければいけない。が、居住空間を広くするためか、E20キャラバンは、ドア内部はスカスカながら、同年代の乗用車よりドアが薄く、アクチュエーターや作動ロッドを収めるには、なかなかタイトだった。なお、同じこ業を助手席側、そして内部に若干余裕のあるスライドドアにも同じ作業を行う。


アナログな車体にデジタルな頭脳を這わせる
物理的な設置が終われば、次は配線作業だ。常時電源とアースを取り、各ドアのアクチュエーターへ配線を這わせていく。車内に配線を通すジャバラなどという気の利いたものは初代キャラバンにはないため、ドアの下部水抜き穴から、ドアヒンジの裏側へ配線を隠しつつ、クーラーのハーネス通し穴から車内へと引き込んだ(運転席側は、いい位置にグロメットがあったのでそこから)。なお、ウインカーを点滅させたり、オプションでアンサーバックサイレンの装着も可能だ。


ここで鬼門となるのがスライドドアである。開閉するスライドドアに車体側から直接配線を渡すのは不可能。ツーフィットでも取り扱いがあるが、スライドドアスイッチを装着するのが一般的だ。昨今のスライドドア車もみんなこの方式の接点を使っているが、キャラバンはそれ用のグロメットもないし、汎用品のスライドドアスイッチを装着するドアとボディ間の隙間もない(メーカーオプションは、車体側からスライドドアのロックをロッドで開閉する仰々しいシステムだ)。


そこで今回は、スライドドア用にもう1つキーフリーシステムの受信機を追加し、別電源で動かすという手法をとった。TO FITのキットに添付されている説明書に従って5極リレー(エーモンでも純正でも入手が簡単なものを用意。今回はエーモン製を購入)を2個使用し、キーフリーシステムの解錠施錠信号をそれぞれの5極のリレーに送り、アクチュエーターを作動させるというもので、バイク用12Vのシールドバッテリーを内張りの内に隠している。そのままだとバッテリーが消耗してしまうので、オンオフスイッチも設け、さらに外部からそのバッテリーが充電できるよう、充電ソケットもくっつけた。我ながら完璧だ。そして、運転席助手席用の受信機とペアリングさせれば、長かった集中ドアロックの取り付けは完成となる。
⋯余談だが、TO FITのキーフリーシステムを使用する前にAmazonで汎用のキットを2つ使用したシステムを構築していたのだが、うまく動作させることができなかった。2つの受信機を同期させると、追加したスライドドア側のアクチュエーターがなぜか暴走&ショート。格安品のアクチュエーターのスパーギアでロッドを伸縮させる構造にも原因があるかもしれないし、2つの受信機が混線してしまったのかもしれない。販売元に問い合わせてみたのだが、この問題は不明だった⋯⋯。
ついに迎えた「鍵穴からの卒業」
すべての配線を終え、バッテリーのマイナス端子を戻す。ポケットにTO FITの小型スマートキー(リモコン)を忍ばせ、キャラバンから数メートル離れてみる。
「ガチャッ!(仰々しいロックの音)」
アンサーバックのハザード点滅とともに、力強いアクチュエーターの音が響き、見事に全ドアがロックされた。そして、再びゆっくりとクルマに近づく。
「ガチャッ!(仰々しいロック解除の音)」
触れてもいないのに、今度はドアロックノブが跳ね上がる。まるで50年前のクルマが意思を持って出迎えてくれたかのような、えも言われぬ感動が押し寄せてきた(AIって大げさな表現好きですよね?)。初見だとちょっとびっくりするほどだ。
https://www.youtube.com/shorts/sj7AEJwUILg
外見は昭和の商用車。しかし、中身は令和のスマートキー仕様? 車体側を一切加工していないので、後世に伝えるためのオリジナル性も失われていない。
ともあれ、荷物満載でのキャンプ帰りも、雨の日の買い出しも、これからはポケットに手を入れたまま、涼しい顔でキャラバンに乗り込める。これは非常に便利だ。




